蕎麦の種類と挽き方による分類について

2024年5月21日

日本の食文化を代表する蕎麦。その歴史は古く、平安時代には既に食されていた記録が残っています。蕎麦は、香り高く滋味深い味わいが特徴で、日本人のみならず世界中の人々を魅了しています。しかし、一口に蕎麦と言っても、その種類は実に多種多様。今回は、蕎麦の種類について詳しく解説し、その奥深い世界へとご案内します。

蕎麦粉の種類と特徴

蕎麦の種類を理解する上で、まず欠かせないのが蕎麦粉の種類です。蕎麦粉は、蕎麦の実を製粉して作られますが、その製粉方法や蕎麦の実の種類によって、風味や食感が大きく異なります。

挽き方による分類

蕎麦粉は、挽き方によって「全層粉」「更科粉」「粗挽き粉」の3種類に大別されます。

全層粉蕎麦の実を丸ごと製粉したもので、蕎麦の風味を最も強く感じられます。色は黒っぽく、香りが高く、しっかりとしたコシが特徴です。蕎麦の殻の部分も含まれるため、栄養価も高く、食物繊維やビタミンB群が豊富です。蕎麦本来の風味を味わいたい方におすすめです。
更科粉蕎麦の実の中心部分のみを製粉したもので、色は白く、上品な甘みと滑らかな舌触りが特徴です。蕎麦の風味は控えめで、更科蕎麦として親しまれています。更科蕎麦は、江戸時代中期に信州高遠藩の保科正之が江戸に伝えたとされ、その名の由来となっています。のど越しが良く、上品な味わいが特徴です。
粗挽き粉蕎麦の実の甘皮に近い部分を多く含むように製粉したもので、色は茶褐色で、野趣あふれる風味が特徴です。粒感が残っており、噛み応えがあります。蕎麦の風味をしっかりと感じたい方におすすめです。粗挽き蕎麦は、田舎蕎麦とも呼ばれ、素朴な味わいが魅力です。

蕎麦の実の種類による分類

蕎麦の実の種類によって、「普通蕎麦」「ダッタン蕎麦」の2種類に分けられます。

普通蕎麦一般的に栽培されている蕎麦で、甘皮が黒いため「黒蕎麦」とも呼ばれます。香りが高く、味が濃いのが特徴です。日本各地で栽培されており、産地によって風味や食感が異なります。
ダッタン蕎麦中国北部原産の蕎麦で、甘皮が緑色のため「緑蕎麦」とも呼ばれます。ルチンというポリフェノールを多く含み、健康効果が期待されています。独特の苦味があり、好き嫌いが分かれます。ダッタン蕎麦は、健康志向の方や、一風変わった蕎麦を味わいたい方におすすめです。

蕎麦の産地と特徴

蕎麦は、その産地によって風味や食感が異なります。日本各地で様々な種類の蕎麦が栽培されており、それぞれに特徴があります。

北海道

広大な大地で育った蕎麦は、香りが高く、甘みが強いのが特徴です。特に、幌加内町の蕎麦は「日本一の蕎麦」と称され、全国的に有名です。幌加内町の蕎麦は、昼夜の寒暖差が大きい気候と、肥沃な土壌で育つため、良質な蕎麦が収穫できます。

長野県

蕎麦の生産量日本一を誇る長野県では、各地で様々な種類の蕎麦が栽培されています。中でも、戸隠蕎麦や開田高原蕎麦は、その品質の高さから高い評価を得ています。戸隠蕎麦は、戸隠山の湧き水で打たれる蕎麦で、コシが強く、香りが高いのが特徴です。開田高原蕎麦は、標高1000メートル以上の高地で栽培される蕎麦で、甘みが強く、のど越しが良いのが特徴です。

福島県

会津地方で栽培される「会津蕎麦」は、香り高く、コシが強いのが特徴です。また、喜多方ラーメンと並ぶご当地グルメとして親しまれています。会津蕎麦は、会津盆地の寒暖差が大きい気候と、磐梯山の伏流水で育つため、風味豊かな蕎麦が収穫できます。

その他の産地

上記以外にも、岩手県の「わんこ蕎麦」、島根県の「出雲蕎麦」、沖縄県の「沖縄そば」など、各地で特徴的な蕎麦が楽しまれています。わんこ蕎麦は、一口サイズの蕎麦を次々とおかわりするスタイルで、岩手県の名物です。出雲蕎麦は、蕎麦の実を皮ごと挽いた蕎麦粉を使うため、色が黒く、香りが高いのが特徴です。沖縄そばは、蕎麦粉ではなく小麦粉を使った麺で、豚骨ベースのスープでいただきます。

蕎麦の食べ方

蕎麦は、その食べ方によって様々な楽しみ方ができます。代表的な食べ方をいくつかご紹介します。

温かい蕎麦

かけ蕎麦：最もシンプルな蕎麦で、温かい蕎麦つゆをかけていただきます。蕎麦本来の味を楽しみたい方におすすめです。
月見蕎麦：かけ蕎麦に生卵を落としたもので、まろやかな味わいが楽しめます。卵の黄身を崩して蕎麦つゆと混ぜると、よりコクが出て美味しくなります。
きつね蕎麦：甘辛く煮た油揚げを乗せた蕎麦で、関東地方で広く親しまれています。油揚げの甘みと蕎麦つゆの香りが絶妙にマッチします。
たぬき蕎麦：揚げ玉を乗せた蕎麦で、サクサクとした食感が楽しめます。揚げ玉のコクが蕎麦つゆに溶け出し、風味豊かな味わいになります。
天ぷら蕎麦：揚げたての天ぷらを乗せた蕎麦で、豪華な味わいが楽しめます。天ぷらの種類は、海老、野菜、かき揚げなど様々です。

冷たい蕎麦

ざる蕎麦：茹でた蕎麦を冷水で締め、ざるに乗せていただきます。蕎麦つゆにつけて味わいます。蕎麦の風味をダイレクトに感じられる食べ方です。
もり蕎麦：ざる蕎麦とほぼ同じですが、海苔が乗っている点が異なります。海苔の香りが蕎麦の風味を引き立てます。
ぶっかけ蕎麦：冷たい蕎麦つゆをぶっかけていただきます。薬味や具材を乗せて楽しむこともできます。大根おろし、ネギ、わさび、卵、天かすなど、様々な薬味や具材をトッピングできます。
とろろ蕎麦：すりおろした長芋をかけた蕎麦で、ネバネバとした食感が楽しめます。長芋の粘りが蕎麦つゆと絡み合い、まろやかな味わいになります。

蕎麦の栄養と健康効果

蕎麦は、栄養価が高く、健康効果も期待できる食材です。

豊富な栄養素

蕎麦には、タンパク質、ビタミンB群、食物繊維、ミネラルなどが豊富に含まれています。特に、ルチンというポリフェノールは、血圧を下げる効果や毛細血管を強化する効果があるとされています。ルチンは、水溶性のポリフェノールで、蕎麦の殻の部分に多く含まれています。

健康効果

蕎麦には、以下のような健康効果が期待されています。

血圧を下げる：ルチンには、血管を拡張させる作用があり、血圧を下げる効果が期待されています。
血糖値の上昇を抑える：蕎麦に含まれる食物繊維は、糖質の吸収を緩やかにし、血糖値の上昇を抑える効果があります。
腸内環境を整える：蕎麦に含まれる食物繊維は、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整える効果があります。
疲労回復を促す：蕎麦に含まれるビタミンB群は、疲労回復を促す効果があります。
美肌効果：蕎麦に含まれるルチンには、抗酸化作用があり、美肌効果が期待されています。

蕎麦の選び方

美味しい蕎麦を選ぶポイントは、以下の3点です。

蕎麦粉の割合蕎麦粉の割合が高いほど、蕎麦の風味を強く感じられます。十割蕎麦は蕎麦粉のみで作られた蕎麦で、最も香りが高いです。二八蕎麦は、蕎麦粉8割、小麦粉2割で作る蕎麦で、コシが強く、のど越しが良いのが特徴です。
蕎麦の実の種類普通蕎麦とダッタン蕎麦では、風味や食感が異なります。好みに合わせて選びましょう。普通蕎麦は、香りが高く、味が濃いのが特徴です。ダッタン蕎麦は、独特の苦味があり、ルチンを多く含んでいます。
産地蕎麦は産地によって味が異なります。様々な産地の蕎麦を試して、お気に入りの蕎麦を見つけましょう。蕎麦の産地は、北海道、長野県、福島県などが有名ですが、他にも様々な産地で蕎麦が栽培されています。