日本の食卓には欠かせない「うどん」は、老若男女を問わず広く愛されている主食のひとつです。柔らかくて喉ごしがよく、胃にも優しいという特徴から、食欲がないときや体調が悪いときに選ばれることも多く、また調理のバリエーションも豊富で、冷たくしても温かくしても美味しく食べられるのが魅力です。
しかし、近年健康意識が高まる中で、「うどんを食べると血糖値が上がるのでは?」と心配される方が増えてきました。とくに糖尿病を予防したい方や、すでに血糖値が高めで医師から注意を受けている方にとって、日々の主食の選び方は非常に重要です。炭水化物の摂りすぎは、血糖値の急上昇を招き、それが続くとインスリンの効きが悪くなり、体にさまざまな不調をもたらします。
うどんの原材料は精製された小麦粉であり、食物繊維が取り除かれている分、体内での分解・吸収が非常に早いのが特徴です。このため、食後すぐにブドウ糖に変換され、急激な血糖値の上昇を引き起こします。特に、食後の血糖値が急に上がることで「食後高血糖」という状態が起こりやすくなり、これは糖尿病予備軍の段階でも見られるリスク要因とされています。
つまり、うどんは非常に美味しい反面、食べ方や食べる量によっては血糖コントロールの観点から注意が必要な食品とも言えるのです。
うどんのGI値と血糖値への影響
「GI値」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。これは「グリセミック・インデックス」の略で、食品が体内でどれくらい早く血糖値を上げるかを示す数値です。GI値が高いほど、血糖値が急激に上がりやすく、逆に低いほど緩やかに上がる傾向があります。
白いうどんのGI値は、およそ80〜85とされており、これはかなり高い部類に入ります。たとえば、白米のGI値が84程度、フランスパンで93といった具合に、精製された炭水化物ほどGI値が高くなる傾向があります。GI値70以上の食品は「高GI食品」として分類され、糖尿病患者や血糖値を気にする方には注意が促されているのです。
また、GI値が高い食品を単体で食べると、その影響がより顕著になります。例えば、つるっとした冷たいうどんだけを昼食に取った場合、食後30分ほどで血糖値が急上昇し、インスリンが多量に分泌されるため、その反動で急降下し、空腹感やだるさを引き起こす「血糖値スパイク」になりやすくなります。これを繰り返すことが、体の代謝に悪影響を与え、慢性的な疲労感や集中力の低下、さらには生活習慣病へとつながってしまうのです。
しかし逆に言えば、この血糖値の上昇をコントロールできれば、うどんも適切に取り入れることが可能です。食べ方ひとつで、健康的な食生活を維持することができるのです。
うどんを食べても血糖値を安定させる工夫
血糖値のコントロールは、なにも「うどんを完全に避ける」ことだけが正解ではありません。むしろ、うどんを食べながらでも血糖値の上昇を抑える工夫は十分に可能です。ここでは、その具体的な方法について詳しくご紹介します。
まず最初に大切なのが、「食べる順番」です。最近の栄養学では、「ベジファースト」といって野菜から食べ始める食事スタイルが注目されています。食物繊維の豊富な野菜を最初に摂取することで、腸内での糖質の吸収を遅らせ、血糖値の上昇スピードを緩やかにすることができるのです。ですから、うどんを食べる前に小鉢のサラダや温野菜をゆっくり噛んで食べることを習慣にすると、血糖コントロールに大きく役立ちます。
さらに、「たんぱく質と脂質を含むおかずを一緒に食べる」こともポイントです。たとえば、鶏むね肉の蒸し物や、温泉卵、豆腐、おからハンバーグなどを合わせると、胃の中での滞在時間が長くなり、糖質の吸収を抑えてくれます。たんぱく質が豊富だと、満腹感も得られやすくなるため、過食を防ぐという意味でも効果的です。
また、「うどんを汁ごと飲まない」「早食いを避ける」なども見落としがちなポイントです。汁物の塩分や糖質は意外に多く、完飲してしまうと知らぬ間に糖分過多になってしまいますし、早食いは血糖値の急上昇の原因となります。ゆっくりよく噛んで食べることは、シンプルですが最も効果的な習慣と言えるでしょう。
血糖値が気になる人におすすめのうどんアレンジ
「うどんが大好き。でも血糖値が心配」という方にとって、うどんを我慢するのではなく、種類や調理法を変えることで血糖コントロールに配慮することが理想です。最近では、健康志向の高まりから、さまざまな低糖質うどんや、食物繊維を強化した麺類が登場しています。
代表的なものは「全粒粉うどん」です。これは小麦の表皮や胚芽なども一緒に挽いて作られており、食物繊維・ビタミン・ミネラルが豊富で、GI値も通常のうどんに比べて低くなっています。また、「こんにゃく入りうどん」「大豆粉入りうどん」なども人気で、これらは糖質が抑えられ、かつ咀嚼回数が増えるため満腹感も得られやすく、ダイエット中の方にもおすすめです。
また、食べるシーンにもひと工夫できます。たとえば、外食でうどんを選ぶ場合には、「月見うどん」や「鶏南蛮うどん」など、たんぱく質が含まれているメニューを選びましょう。さらに、うどんに加えて小鉢でサラダや酢の物がついているセットメニューなどを選ぶのも効果的です。
家で食べるときは、具だくさんにすることが基本です。ネギ、しいたけ、にんじん、油揚げ、わかめ、卵などを加えれば、それだけで栄養バランスが整い、血糖値の上昇も緩やかになります。工夫次第で、うどんは「糖質爆弾」ではなく、バランスの取れた健康食にもなり得るのです。
うどん以外の選択肢と食生活の見直し
どれだけ工夫をしても、うどんは基本的には「炭水化物メイン」の食品です。そのため、頻度や量を適切に調整しながら、ほかの主食とのバランスを取ることも大切です。毎日の食事を「うどんばかり」ではなく、「たまには玄米や雑穀米にしよう」「そばに変えてみよう」と選択肢を広げることが、自然な形で血糖値を守る食生活へとつながります。
玄米や麦ごはん、オートミール、全粒粉パンなどは低GI食品であり、血糖値のコントロールに優れています。また、そばも十割そばを選べば食物繊維が豊富で、血糖値を急激に上げにくい食品とされています。主食のローテーションをうまく活用することで、飽きずに続けることができるという点もメリットです。
加えて、「間食の選び方」も見直してみましょう。せっかく主食で気を付けていても、間食に甘いスナックやジュースを摂ってしまっては血糖値はすぐに跳ね上がってしまいます。ナッツ類、無糖ヨーグルト、チーズ、茹で卵といった低糖質かつ栄養価の高い間食を選ぶようにすれば、空腹感を満たしつつも健康管理がしやすくなります。
血糖値と体のリズムを整える生活習慣も大事
食事だけでなく、生活習慣全体を見直すことで、より安定した血糖値コントロールが可能になります。たとえば、食後に軽く歩くだけでも、ブドウ糖を筋肉に取り込む働きが活発になり、血糖値の急上昇を抑えることができます。毎日15分ほどのウォーキングを取り入れるだけでも、その効果は十分感じられるでしょう。
また、睡眠とストレスの管理も非常に重要です。慢性的な睡眠不足は、インスリンの働きを鈍らせ、血糖値を高めやすくしてしまいます。十分な睡眠を取ることで、ホルモンバランスが整い、血糖値の変動も少なくなります。ストレスが溜まると、コルチゾールというホルモンが分泌され、これもまた血糖値を上昇させる原因になります。リラックスする時間や趣味に没頭する時間をしっかりと確保することで、精神的にも安定し、結果として血糖値の安定にもつながります。